採用計画とは?立て方のポイントや採用戦略の違い、テンプレートも合わせてご紹介
人材は企業が発展するためになくてはならない存在です。
採用を成功に導き、自社に合った人材を採用するためには、綿密な採用計画を練る必要があります。今回は、採用計画の立て方や計画を立てる際のポイントを紹介します。
採用計画とは
採用計画とは、企業の方針や現状の問題点を明らかにし、自社に適した人材を採用するためのプランです。採用計画には以下の要素が含まれています。
・求める人物像・採用ビジョンの策定
・採用課題の洗い出し・市場調査
・期日・採用人数・必要ポジションなどの目標設定
・採用手法の選定
・採用スケジュールの策定
当然誰でも採用すればよいわけではなく、会社が抱えている課題を解決できる人材や会社のビジョン・方針に共感できる人材の採用が求められます。
また、採用に要する期間や費用を現実的な範囲に収めることも重要です。
採用活動が企業にとって有益なものにするには、候補者の応募から採用〜入社後の活躍を想定した計画が必要です。
採用計画が求められる理由
採用活動は企業がより利益を追求するための活動です。
採用活動では、現場に足りない人材を人事がきちんと把握しなければなりません。把握が不十分だと、必要な時期に採用が間に合わない、採用機会を逃すなどの問題が発生してしまいます。
これらの問題を回避するには、人事部門と現場との密な連携が欠かせません。
労働人口が減少傾向にある現在、人材確保には苦戦を強いられています。効率的に、確実に利益を得るには綿密な採用計画が求められます。
採用計画を立てるタイミング
採用計画の立案はタイミングが非常に重要です。人材が必要になる時期から逆算して計画を立てましょう。
新卒や中途など採用形態により異なりますが、3〜4か月前に採用計画が練られていると、採用活動がスムーズに進められます。
例えば、社員の退社で欠けたポストに1人雇う際は、3〜4か月程度前から動くことが一般的です。計画の立案や求人の掲載に1ヶ月程度、選考に1ヶ月半〜2ヶ月程度かかると考えましょう。入社前後のフォローを含めれば、かかる期間はおおよそ3〜4か月です。
採用計画と採用戦略の違い
採用計画と採用戦略は混同されやすいものです。しかし、両者には明確な違いがあります。
採用計画は、自社内で採用の準備を進めるための計画です。例えば「自社で半年後に行うプロジェクトに向けて、3ヶ月前から人員を増やす」という考えは採用計画の立案です。
採用戦略は競合他社との人材の取り合いに打ち勝つための作戦です。「競合他社が中途採用中心だから新卒採用を狙おう」という考えは採用戦略に該当します。
両者の違いは以下のとおりです。
採用計画 | 採用戦略 | |
---|---|---|
採用の形態 | △ | 〇 |
採用の日程 | 〇 | × |
採用したい人物 | 〇 | △ |
応募内容 | × | 〇 |
採用戦略の失敗による経営的面の損失
採用戦略を間違えると、あらゆる面で不利益が生じます。採用活動にかけた日時や費用が無駄になるだけでなく、人材不足にもつながるでしょう。
採用活動失敗の原因で最も多いものは、母集団の形成失敗です。採用目標人数より多い応募者が集まらなければ、よりよい人材は選べません。
求人広告の打ち出し方や打ちだすタイミングの見直しや事前リサーチを徹底的に行い、応募者を増やす施策をしましょう。
採用計画の立て方
採用計画を立てることは難しいといえます。採用計画を立てるための具体的な作業や流れを解説します。
①経営方針と事業計画を把握する
最初に、経営方針と事業計画を把握します。
採用計画を立てるときは経営陣や部門責任者との連携が欠かせません。経営方針や今後の事業計画をヒアリングし、今後注力する事業を把握しましょう。
これらを正確に把握したうえで、経営陣と共に今後の戦略を練ります。
例えば「5年間で業績を2倍にしたい」という事業計画であれば、営業の増員が必須であるなどです。また、営業の増員に伴って、営業をサポートする事務職の増員も求められるでしょう。
このように事業計画から必要な人材を導き出すことが重要です。
②会社のビジョンと採用計画を結びつける
採用を計画的に行っていくには経営陣や人事を始め、現場が同じ方向性(ビジョン)を見ることが大切です。
ビジョンを明確にすることで、ターゲットとなる求職者に会社として大切にする考え方や在りたい姿を伝えられます。
また、これらを伝えることで入社前後のミスマッチを少なくするメリットもあるでしょう。
ビジョンと採用を結び付けるには、以下の要素を整理することが重要です。
・注力する事業の方向性(現在と未来)や強み・弱み、競合の状況などの分析
・会社の良さ(会社経営陣や社員の良さ、伝統、大切にしていること)の整理
・注力する事業と採用したいポジションはリンクしているか
・採用する人材のイメージ像(能力、考え方、属性、人数)の整理
実際の採用計画に入る前に、会社や組織単位の順に計画を立てることで、本当に求めている人物像が見えてくるはずです。
③採用課題の洗い出し
採用計画の大枠となる目標が決まれば、実現するための施策を考えます。
その際、現状の採用体制に課題があるときは、課題の抽出と見直しを実施しましょう。
例えば、応募が集まらないという課題がある場合、広告の訴求点を変えることや募集要項の見直しが有効です。また、採用活動に割く人的リソースがないことが課題であれば、業務分担の変更や外注の検討などが有効です。
現状の課題点を把握すると、施策が立てやすくなります。
④競合他社や採用市場の調査
採用計画の大枠が決まったら、中身を精査します。
競合他社や採用市場の調査は欠かせません。自社が求める人材は他社も必要な人材です。競合他社との競争に勝って初めて優秀な人材を獲得できます。他社の広告・訴求ポイント・募集要項などを自社と比較し、差別点があるかどうかを確認しましょう。
⑤人員数や必要ポジション、期日などの目標設定
次は、具体的な数字を設定します。採用したい人数や採用するポジションはもちろん、採用活動の期限も決めましょう。
ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトを用いて各種データをまとめると、採用活動中に振り返りやすくなります。Excelで採用活動についてまとめる際のテンプレートは後述します。
⑥採用手法・選考方法の選定
日程や人数が決まり次第、採用手法や選考方法を考案しましょう。
採用手法は、Webや紙面による求人広告を用いるほか、人材紹介会社を頼る方法、スカウトサイトを用いるなど様々です。
選考方法は、対面形式だけでなくオンライン形式もおすすめです。それぞれの良さを比較して、自社に合った方法を選びましょう。
⑦採用スケジュールの決定
最後に、ここまでで決定した採用活動の内容を無理なく行えるスケジュールを設定します。前述の通り、全体を通して3〜4か月程度あると余裕を持って採用活動ができます。採用ビジョンと照らし合わせながらスケジュールを設定しましょう。
また、新卒採用の場合は、実務経験のない学生を対象にするため、自社に適した人材かを見極めるには多くの時間が必要なことに注意が必要です。
中途採用は、内定を得てから現職に退職交渉を行うケースがあるので、入社までに時間がかかる場合があります。そのため、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。
採用計画を立てる際のポイント
ここからは、採用計画を立てる際に意識したいポイントを説明します。計画を立てる前に確認しておきましょう。
①過去の採用計画と採用結果の分析する
過去に採用を行っている場合、過去の結果を分析することで有益なデータが得られます。
とくに過去の採用計画が未達の場合、なぜ達成できなかったかを十分に分析する必要があります。また失敗した面ばかりに目を向けるだけでなく、成功した面の分析や振り返りも忘れずに行いましょう。
成功した面は継続しつつ、失敗理由は過去の採用計画のどの部分(例:フローやターゲット、求人内容、面接回数)に対して深堀りを行い、具体的な改善策を立てましょう。
こうして過去の成功や失敗を踏まえて採用計画を練ると、よりよい採用活動が見込めます。
②明確な採用基準を設定する
採用基準が曖昧だと、採用まで時間がかかったり適切な人を採用できなかったりします。
例えば、「プログラミング経験が豊富な人」「企画立案が得意な人」は曖昧な基準です。
「JavaScriptでのWeb開発経験がある」「社内の新規事業に携わった経験がある」など、明確な基準を設けることで、よりよい人材を探せるでしょう。
③計画段階では予算を立てない
計画段階では予算を明確に決めずに進めましょう。予算を決めると、手段に制限ができるためです。
採用活動の目的は自社に利益をもたらせる人材の採用です。計画の段階では予算を細かく設定せず、最終段階で予算を考えましょう。
④競合の採用状況・求職者ニーズの分析
働き方改革の影響もあり、求職者のニーズは多様化しています。正社員だけでなく、業務委託など異なる形態の募集を求める応募者もいるでしょう。今までの採用形態に囚われず、新しい雇用形態も検討しましょう。
⑤社内の協力体制を整備する
採用計画のゴールは、内定を出すことではなく、入社をして会社の利益拡大に貢献してもらうことです。そのためにまずは、採用した社員を受け入れる体制を整備しましょう。
現場に新入社員を受け入れる体制が整っていると、新入社員がスムーズに現場に馴染むことができるので定着率向上にもつながります。
そのためには、採用部署の責任者と人事部が連携して新入社員の様子(困っていることが無いかなど)を確認することが重要です。常に情報共有を行う仕組みを作ることで、社員が働きやすくなるでしょう。
Excelを使った採用計画テンプレートの作り方例
採用計画をExcelで作るときは、「採用目標」「採用チャネル」「選考方法」「採用スケジュール」などの項目を作り、詳細に記入しましょう。
また、Excelはウェブ上にテンプレートが無料で配布されています。テンプレートを利用する際は、「分析シート」「ビジネス計画書」「ガントチャート」などのテンプレートを参考にするとよいでしょう。
採用計画を立てた後・内定後にするべきこと
採用計画を立てたあとは、計画に従って採用活動を進めます。
求人広告の作成や人材紹介会社への依頼、選考担当者のスケジュール調整などの準備をしましょう。
求人広告で募集を開始したら、定期的にアクセス状況や応募状況を確認します。反響に合わせて適切な対策を行うと、応募者の増加につながるでしょう。人材紹介会社にも応募状況や要件の緩和が必要なのかなどの確認が必要です。
選考が終わって内定者を決めた後は、内定辞退が起こらないよう注意を払う必要があります。内定辞退を防ぐために、内定を出した後も個別面談を設定したりなど、密なコミュニケーションを取りましょう。ぜひ、入社をしてほしいという候補者へのメッセージにもなります。
採用計画を改善する方法
採用計画は、進めるうちに課題が見えてくるものです。定期的に見直しを行うことで課題を改善する必要があります。
改善の際、最初に取り組むべきものは数値に現れる内容です。
例えば、広告の閲覧者数やエントリー人数が少ない、面接の通過率が低いなどの問題が挙げられます。その次に、採用プロセスごとに見直しを行い、最適化を行いましょう。
まとめ
採用計画について紹介しました。採用活動は企業と応募者の新たなつながりを作る活動です。競合他社や応募者を意識して作ることで、より会社の方針や応募者に寄り添った計画が作れるでしょう。
職や働き方が多様化する現代では、多くの企業が採用計画に悩んでいます。優秀な人材を獲得するために、自社に合った採用計画を作成しましょう。