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資産価値の向上

ブランド・エクイティ(Brand Equity)とは、「ブランドが持つ資産価値」のことで、ブランドという形のないものを資産として評価し、その価値を高めるために育成や投資をしていこうとする考え方です。
エクイティ(Equity)とは、金融の世界では「株式資産」「自己資産」を指す言葉です。人気の高いブランドには多くのファンが付きます。彼らは繰り返し購入をしたり、口コミによって新規顧客を呼び込んだりして、そのブランドの利益率を高め、企業の成長を支えてくれます。
しかし、どんなに人気があっても、顧客の期待にそぐわない商品を販売したり、社会的に反感を買うような事件を起こしたりといったことがあると、ブランド・エクイティが一気にマイナスに転じることがあります。例えば、エネルギー企業の石油タンカーが転覆して海洋汚染を引き起こしたり、自動車メーカーが性能検査の結果を改ざんしたりといった事件があれば、ブランド・エクイティは下落します。
このような信頼や知名度といったものも含む、無形だけれど企業の価値に影響を与える「ブランド」を、有価証券や不動産と同じような“企業が持つ資産”として評価しようとする姿勢から、ブランド・エクイティの考え方は生まれました。資産とは将来の利益を見込んで保有するものなので、ブランドは単に維持すればいいというものではありません。資産価値を向上させるために、育成や投資といった積極的なマネジメントをしていかなくてはなりません。

ブランド・エクイティが高まると次のようなメリットがあります。

1.マーケティング効率が高まる(指名買いやレコメンドが起きる)
2.価格競争に巻き込まれなくなる(参入障壁を築くことが出来る)
3.リピーターが増える(LTVが向上する)
4.プレミアム価格での販売が可能になる(価格決定権を得る)

ブランド・エクイティの構成要素

では、具体的にどのようなことがブランド・エクイティとなるのでしょうか?ブランド・エクイティの構成要素のモデルには、「アーカーモデル」と、「ケラーモデル」の2つがあります。それぞれのモデルについて説明します。

アーカーモデル

アーカーはブランド・エクイティについて、「ブランドの名前やシンボルと結び付いたブランドの資産(または負債)の集合であり、製品やサービスの価値を増大させるもの」と定義し、次の5つの要素から成り立つとしています。

以下でそれぞれの要素を詳しく紹介します。

1.ブランドロイヤルティ(Brand Loyalty)
ブランドロイヤルティはブランドへの忠誠度や愛着度のことで、5つの要素のなかでも特に重要な要素です。ブランドロイヤルティが上がると、ブランドを継続的に購入したり利用したりする割合が高まります。ブランドロイヤルティを測定する方法には、「そのブランドを親しい人に勧める可能性がどれくらいあるか?」という質問を行うことで企業や商品に対しての愛着・信頼度を数値化する「顧客推奨度調査」がよく使われます。

2.ブランド認知(Brand Awareness)
ブランド認知度は、ブランドがどれくらい知られているかを表します。人は安心感から、知っているブランドを選ぶ傾向があります。そのため有名なブランドの方が、より高い資産価値があると評価されるのです。近年では、ブランド認知という言葉は単にブランドの名前を知っているかどうかだけでなく、その内容や文化への理解までを含めて使われることが多くなっています。

3.ブランド連想(Brand Associations)
ブランド連想とは、顧客がブランド名を聞いたときに連想できるすべてのものを指します。その連想の多くは、広告や口コミ、自分の体験などがもとになります。ブランド連想は、競合と差別化するための基盤となります。顧客にポジティブではっきりとした連想をしてもらえるようにブランディングを行う努力が必要です。

4.知覚品質(Perceived Quality)
ブランドの品質への評価を知覚品質と言います。知覚品質は実際の品質、あるいは企業側が判断する品質ではなく、消費者が認識する品質のことです。製品の機能やスペック、性能だけではなく、信頼感や雰囲気といったことに加えて消費者が主観的に判断するさまざまなことが含まれます。企業側がいくら「自分の商品は高品質だ」と訴えても、顧客がそう考えないのならば、知覚品質は低いのです。
ブランドの知覚品質を上げるためには、信ぴょう性や説得力を持って価値を伝えることが大切です。
信ぴょう性を持って価値を伝える方法はいろいろありますが、そのひとつにブランドの信念やこだわりを大事にする姿勢を見せることが挙げられます。顧客は信念を貫くブランドを信頼し、その製品を高品質だと感じるのです。

5.その他のブランド資産(Brand Assets)
特許や商標権、著作権といった知的所有権や、独自の技術やノウハウ、取引先や顧客との強い関係性など、ブランドの価値を支えて利益を生む無形のものも、ブランド・エクイティです。例えば商標権を持っていれば、競合企業が同じようなシンボルや名前を使えなくなり、顧客を混乱させずにすみます。また特許があれば、独自の技術が法律で保護されます。このように競争相手からブランドを守る力も資産として見なされるのです。

ケラーモデル

ケラーモデルは、アーカーモデルよりも顧客ベースでブランド・エクイティを考えています。レベル1を達成できれば普通のブランド、レベル4まで達成できればブランド・エクイティが高いブランドであるというように、ブランドをマネジメントしていくプロセスをピラミッド型で表現しています。

レベル1 ブランドの認知(Brand Identity)ブランドの突出性
最初のレベルは、顧客がブランドを見てほかのブランドと区別できるように、認知を広めることです。ピラミッドの上の部分を支えるためには、ブランドに対する深くて広い認知を獲得しなければなりません。

レベル2 ブランドの意味づけ(Brand Meaning)特徴の理解―印象・イメージ
次のレベルは、「ブランドの特徴や価値が理解されているか」と「どういう印象・イメージを持たれているか」の2つに分けて考えます。

レベル3 ブランドに対する反応(Brand Response)理性評価―感性評価

3番目のレベルは、ブランドに対する顧客の反応(評価)です。品質や機能に対する理性的な評価と、感情的な評価の2つに分けられます。理性評価では、品質、信頼性、特別感があるかなどが評価項目となります。また感情評価では、楽しさ、興奮、安全、社会的に認められているかといったことが評価項目となります。それぞれの評価項目はブランドのポジショニングやブランドのコンセプトに沿ったものでなくてはいけません。

レベル4 ブランドに対する共感や同調(Resonance)
ピラミッドの頂に当たるのはブランドに対する共感や同調です。ブランドと顧客の間の心理的な絆とも言え、アーカーモデルでいえばブランドロイヤルティに当たる部分です。この共感によって、ファン同士が絆で結ばれることもあります。このレベルに達すると「家族や友人に勧めたい」「このブランドがなければ困る」「ブランドに愛着を感じる」といったことを顧客に思ってもらえるようになります。

ブランド・エクイティの視点で企業価値を見直す

ブランドという形のないものを、企業価値を左右する資産として評価し、その価値を高めるために育成や投資をしていこうとする考え方が、ブランド・エクイティです。まずは、自社ブランドをブランド・エクイティの観点から見直してみましょう。輪郭があいまいに見えていたブランドの価値が少し明確になるはずです。

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